子どもと携帯

このコラムは普段の子どもの生活ではなく、社会的養護をはじめとした、子どもたちの一般的な状況を発信します。

小中学生の所持について文部科学省が一部規制を緩和しています。

携帯電話の所持については、もう以前から一般化している印象があります。

実態は
  • 高校生で初めてスマートフォンを持つ、という割合は全体の10%

直近の東京都の調査(2019)では、初めてスマートフォンを所持するのが高校1年生、という生徒は、検査対象者のうち10%となりました。[1](最も多いのは中学1年生)

  • 全額携帯料金を支払っている高校生は全体の5%

古い調査ですが、ベネッセ社の調査(2008)では、全額携帯料金を支払う高校生は5%ということ[2]です。
なお、Zaim社の調査[3]によれば、最近の携帯電話の月々の料金は、19歳以下で、月8~9千円くらいのようです。

目黒若葉寮の子どもたちは

まず目黒若葉寮の子どもが携帯電話を持つための条件は

  1. 携帯電話の端末代金、利用料金は個人の負担
  2. Aができる場合、中学33学期以降、契約が可能(2019年より。それ以前は高校入学後)
  3. 契約する前に、料金の3か月分を貯蓄する(アルバイトをあてにしていた場合、収入が減った・無くなった時のためのものです)

となっています。

SNSの利用や生活習慣の乱れを防ぐためのルールや約束事は、子どもそれぞれにありますが今回は割愛いたします。

つまり、実態と照らし合わせると、目黒若葉寮の子どもは、かなりマイノリティであると言わざるを得ません。

各ご家庭と同じように、使えるお金に限りがある中ですが、そのなかで、子どもに携帯電話を持たせる意義はどこにあるのか。
このコラムをご覧いただいている皆さまはいかがお考えでしょうか。

2つの視点で考えてみたいと思います。

①一般的な水準に合わせる

携帯電話は生活に必要か、家庭が提供すべきか、ということについてはそれぞれ考え方や条件によって異なります。

海の向こうアメリカでは、2014年に成立した合衆国法に、平常化(Normalcy)を保障しましょう、という言及があります。[4]

これは、措置児童も一般家庭の児童も、年齢、発達段階上適切な経験を等しく得られるようにしよう、という考え方です。

各州でこの法律の適用は異なります。そんななか、カリフォルニア州は携帯電話の所持も「必要な経験」の例として挙げています。[5](義務ではありません)

なぜ、「必要な経験」か。所持したことによって、同時に、うまく使えるようになってさらに得られた経験を振り返ってみると、その理由は分かる気がしませんか。

参考までに、LINE社のサイトでは次のようにメリット、デメリットを紹介しています。
https://mobile.line.me/guide/article/20190801-0018.html#exStyle4

ポイントとしては、児童の育ちの環境によって、携帯電話を所持することで得られる経験に差が生じてしまうことを、是とするか、ということになります。

②自立の視点から

実際に社会生活を送るうえで必要不可欠な要素もあります。

スマホを業務用として用意している企業は4割。[6]スマートフォンが使った経験がないと困りますね。
同時に、業務で個人の携帯電話を使用する割合が6割に登っています。

他のケースでも、「連絡先」がないことで、選択肢が狭まることはあります。

社会性に課題を抱えたある子どもが、自立のためにアルバイトをしよう、と考え、その子なりに「やれそう」と思ったアルバイトが見つかりました。
ですが、応募条件に携帯電話必須、と書かれていたため、諦めることを繰り返した、そんな例がありました。

そもそも持っていないと、社会生活を送ることが困難になったり、自立した生活に支障をきたす、ということです。

まとめ 

経験の幅を広げることができ、一般的に所持していることが当然、と思われている携帯、スマートフォン。

金銭の問題で、施設児童だから、よそはよそだ、と制限することで、経験に差ができたり、自立の妨げになったりしてしまうのは、子どもからすれば悲しいことです。

  • 中学卒業後も友だちとつながること。
  • 困った時、情報を集めたい時に、さっと集められること。
  • それを繰り返していくなかで、情報の取捨選択が上手になること。
  • 住みたいお家に住むこと。
  • 好きなバイトや、自分に合うかたちで、自立のためのお金を稼ぐこと。

これらの経験や能力は、広げ、育んでいってほしいと思いますし、自立した後の生活をよりよいものにしていくことが期待できます。

もちろん、子どもの余暇活動、家計の負担、経験や自立という観点から、負担を分け合う、という考え方はあって然るべきです。

とはいえ、大人が、社会が必要であると考えるのであれば、われわれの側が「最低限」は用意してあげたいものです。

デメリットとうまく付き合うことを、育ちの支援上、とても大事なテーマにしつつ、あらゆる子どもが気軽に携帯電話を手にできるように、まずは「最低限」が出来上がり、その段階が上がっていく状況になってほしいと考えます。

※本稿は目黒若葉寮職員の個人的見解が含まれています。取扱いにはご注意ください。


[1] 都民安全推進本部総合推進部都民安全推進課(2020)「家庭における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査結果報告書」p.3
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/04/06/documents/02.pdf

[2] ベネッセ教育総合研究所(2008)「子どものICT利用実態調査」
https://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/ict_riyou/hon/hon1_5.html

[3] Zaim社(2019) スマホ・携帯電話の利用料金に関する調査結果より
https://zaim.co.jp/news/archives/4433

[4] 合衆国法典113-111
https://www.congress.gov/113/plaws/publ183/PLAW-113publ183.pdf

[5] カリフォルニア社会保障局(California Department of Social Services(2020)「第6.1版里親承認プログラム指示書(Resource Family Approval Written Directives)」p.102
https://www.cdss.ca.gov/portals/9/ccr/rfa/WD-V6.1-FINAL-1.7.20_AV.pdf

[6] Lookout(2016)日本企業のスマートフォン利用動向、 モバイル機器業務利用に付随するリスクの実態調査結果よりhttps://blog.lookout.com/jp/